思い込みをほぐす「臨床美術」/山増智子

■臨床美術との出会いと挑戦

臨床美術という言葉に出会ったのは15年前。娘が通う大学の広報誌にあった「臨床美術士は、アートを社会に役立てることができる資格である」という一文がきっかけでした。当時50代半ばでしたが、「これだ!」と直感し、資格取得を決意。東京校に通って資格を取得し、共に学んだ仲間とグループ「エッグプラント」を結成しました。その後、介護施設などで8年間にわたり実践を積み重ねてきました。

■自己肯定感を育み、視野を広げる

臨床美術が大切にしているのは、「ありのままの自分」を表現できる自己肯定感や、「自分にもできる」という自己効力感です。制作後の鑑賞会では、他者の多様な表現に触れることで、思い込みがほぐれ、視野が広がります。アートが人と人をつなぐコミュニケーションの手段となり、場を活性化させてくれます。

■五感で描き、「うまい・へた」を手放す

臨床美術は、一つひとつの作品がプログラム化されており、現場に合わせて柔軟に実施できます。例えば「りんごの量感画」では、まずりんごを五感で感じ、その「中身」から描いていきます。参加者は最初「えっ!」と驚きますが、目の前のりんごを育てるような気持ちで描き進めます。そこには評価としての「うまい・へた」という言葉は存在しません。

ほかにも、サンドペーパーへの描画や、手で描くダイナミックな桜など、独特な技法や様々な材料に触れることで、誰もが自然と「思い込み」から解放されフラットになり新たな学びにつながります。

■チームで作り上げる安心の場

ワークショップは、進行役(メイン)とサポート役(スタッフ)のチーム体制で行います。スタッフは材料の準備や受講者のサポート、時にはメインに質問をして場を和ませるなど、参加者が安心して取り組める環境を整えます。終了後は必ず振り返りを行い、次回のより良い実践につなげています。

■心が動く、90分のひととき

「まちの先生講座」でも、最初は緊張気味だった参加者の皆さんが、最後の鑑賞会ではご自身の思いを生き生きと語ってくださいます。90分という時間はあっという間に過ぎ、作り上げた作品はご自宅に大切に飾られているそうです。【写真: 2025年紅葉の風景】

■思い込みをほぐすとは?

AIに聞いてみました → 凝り固まった筋肉をほぐすように、一方的な見方から心と頭を自由に解放していくプロセスと言えます。

先生も受講者も新たな人との出会いや学びによって思い込みをほぐし、アップデートすることは大切な事だと思います。

補足
  • 経済産業省 2023年アートと経済社会報告書より(抜粋)
    絵やオブジェなどの作品を楽しみながら作ることによって脳を活性化させ、高齢者の介護予防や認知症の予防・症状改善、働く人のストレス緩和、子どもの感性教育などに効果が期待できる芸術療法の一つである臨床美術という取組もある。
  • 「臨床美術」及び「臨床美術士」は日本におけるTOPPAN芸造研株式会社の登録商標です。
  • 日本臨床美術協会ホームページhttps://arttherapy.gr.jp/

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